2020-06-22 23:59 [Mon]
家族の心の中で、思い出と共に
» 日記
3日経って落ち着いたか?いいや、まだ駄目そうだ……。6月20日。
昼夜逆転で猫の見守りをしていた私は、昼過ぎに起床した。
少し遅い昼ご飯を食べた後、妹が猫の世話をしているのを確認してから、
自分の部屋に戻り、ベッドの上で横になっていた。
10分ほど経った頃、妹が私を呼んだ。
妹の元に行くと、目を見開いたまま動かない猫が居た。
ボロボロと涙を流す妹が居た。
「息してる?」
妹が泣きながら言った。
私は猫の名前を呼びながら、体を叩いたり、ゆすったりした。
顔の前に手をやったり、目の前に手をやったり、鼻の前に手をやったり……。
猫のお腹は動いていなかった。息をしていなかった。
更に10分ほど経った後、母が家に戻ってきた。
妹は同じく、
「息してる?」
と、泣きながら言っていた。
母はもう見捨てていたような感じだった。
歩けなくなった時も、安楽死させようと言っていたぐらいだ。
特に悲しそうな素振りも見せず、
「よく頑張ったね」
と声だけかけて、遺体を入れる箱を用意し、猫を入れた。
家の中で一番涼しい場所に、猫を移動させた。
母はササッと、猫が居た場所の布団や毛布をゴミ袋に詰め込んだ。
4時間ほど経った後、父が帰宅した。
夕飯時になるまで、私は父が帰宅した事に気が付かなかった。
だから、詳しい様子は分からない。
しかし夕飯を食べている間も、父はずっと涙声になっていた。
ずっと猫の遺体を見て、泣いていたらしい。
父は二日酔いになるほど、ヤケ酒をした。
ベッドで横になるまで、父はずっと泣いていた。
猫が死ぬ3時間前、妹はいつもの個人病院に猫を連れて行っていた。
先生から、
「大丈夫、大丈夫」
との言葉を貰っていたらしい。
「妹が嬉しそうに帰ってきた」と、母が言っていた。
6月21日。
猫の遺体を長く置いておく事は出来ない。
命を失ってしまったので、いずれ形を保てなくなる。
矢継ぎ早になるが、6月21日に火葬をする事になった。
しかし、父は月曜日まで仕事のため参加できない。
平日は妹が仕事のため参加できない。
父は参加を諦めた。朝、仕事に行く前に、
最後に猫とお別れをして、仕事に出かけて行った。
私は父とよく一緒に、猫を病院に連れて行った。
居間に父が居れば、猫は毎日のように、父の膝の上に居た。
必ずと言って良いほど膝の上に居て、
猫から「膝の上に乗せてくれ」と、せがむ事すらあった。
私と一緒に遊んでいる途中でも、父が座ると、
猫は父の膝の上に向かう。邪魔をしても、無理やり父の元へと向かう。
両足があった頃は、トコトコと父母の寝室へと向かい、母のベッドに入る。
次第に母の寝相で追いやられて、父のベッドに入る。
父は猫に遠慮して、ベッドの隅に行く。
猫が父のベッドの中央で寝て、父が床で寝る事すらあった。
妹よりも父の方が、猫と一緒にいた時間が長かったかもしれない。
どちらかと言えば、猫は妹から逃げていたぐらいだ。
そんな父が「親兄弟が死ぬよりも辛くて涙が出る」と言っていた。
死んだ日は仕事から帰ってきた後、ずっと泣いてばかりだった。
父がこんなに泣く様子を、私は見た事が無かった。
猫の葬儀に、父は仕事で参加できなかった。
6月22日。
私は昼夜逆転から抜け出せていない。夜、寝つきづらくなった。
猫の事が頭から離れない。
ゲームに熱中したり、何かをやっていないと、猫の事が思い浮かぶ。
特にベッドで横になって、寝ようとすると、猫の事を考えてしまう。
自然と涙が出てきて、昨日はなかなか眠れなかった。
葬儀に参加できなかった父。恐らく一番悲しんでいる父。
父のために、妹は猫の骨を入れる小さなカプセルを購入した。
葬儀場で販売していたのだ。
「仕事に行くトラックにカプセルを付ける」と父は言っている。
父は未だに誰もいない場所で、猫の名前を呼んでいる。
猫の話は止まらない。
母は悲しみ続ける父を怒ったらしい。
まるで母だけが、別の世界に生きているようだ。
と言うよりも、女性の気持ちの切り替え速度?
妹も、猫が死んだ時こそ、大泣きしていたが、
今ではそんなに悲しんでいる様子を見ない。
お腹の調子が悪いせいなのか、私はずっと食欲が無い。
父も悲しみのせいか、食欲があまり無いと言う。
つらい。
猫の骨を拾っている時に、スタッフの人から話を聞いた。
「100日間は気配がある。だから、いつもどおり話しかけてあげて。
でも、不思議と100日が経つと、気配がすっかりと消えてしまう……」
9月27日辺りまで、猫は家に、いつもどおりに居るのだろうか。
深夜1時になると、私は居間へと向かい猫の様子を見ていた。
最近だけの話ではない。以前から、夜中に居間へと行き、
オヤツを漁る事が多い。
居間の明かりを付けると、いつも猫は眩しそうにしていた。
……もう居ない。私は猫の骨壺を見つめていた。
猫が居なくても、生活は続いていく。
11年は短いようで、長かった。たくさんの思い出がある。
色あせて、多くの事を忘れていくのだろう。
でも、猫自体は一生忘れない。
君が居なくて寂しいよ。でも、前に進んでいくよ。またね